TOKYO MELODY RYUICHI SAKAMOTO 4K Restoration

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2月8日(日)実施:公開記念トークイベントレポート【ゲスト】岡村靖幸さん・藤原ヒロシさん

今もなお⼈々の⼼に⽣き続ける世界的⾳楽家・坂本⿓⼀、その若き⽇のポートレートを通して《東京の⾳》を体感できる幻のドキュメンタリー『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』。制作から約40年の時を経て、4Kレストア版として劇場公開を迎え、現在大ヒット公開中です。

本作の公開を記念し、2月8日(日)には109シネマズプレミアム新宿にて公開記念トークイベントが開催。
ゲストには、80年代から現在まで“東京”を牽引してきた二人のレジェンド。さまざまなジャンルを取り入れたサウンドと独創的なパフォーマンスが支持され、熱狂的な人気を集める唯一無二のシンガーソングライターダンサー・岡村靖幸氏。そして、極めて多彩な肩書きを持ち、そのクリエイションは国内外でつねに注目を集め、“東京のキング・オブ・ストリート”として絶大な影響力を持つ藤原ヒロシ氏。岡村氏が「ヒロシさんとはドキュメンタリー好き仲間として、LINE仲間として、よくドキュメンタリーの話をしているんです」と語る通り、この日は音楽のみならず、ドキュメンタリーの視点からも鋭いコメントが次々と飛び出し、それらの言葉に、観客も熱心に耳を傾けていました。

以下、一部トークのレポートをお送りします。

2/8(日)『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』4K レストア版 トークイベント概要
 
▋日時  2月8日(日) 18:00 の回 上映後 トークイベント 19:20~20:00
▋場所  109シネマズプレミアム新宿 シアター7 (東京都新宿区歌舞伎町1丁目29-1 東急歌舞伎町タワー10F)
▋登壇者(2名)  岡村靖幸(音楽家)、藤原ヒロシ(音楽プロデューサー)  【司会】奥浜レイラ(MC)
 


本作について「すごく貴重な映像ですよね」と語る岡村氏は、かつて発売されていたDVD版で本作を鑑賞したことがあったとのことで、「坂本さんの『音楽図鑑』というアルバムのレコーディング風景や、当時の東京の風景もあって。今だったらこれオッケーが出るのかな、というような映像や、スタジオでご飯を食べているシーンなど、いろんな映像が入っていて。すごく生々しくて、貴重な映像が満載で。当時から面白いと思っていました」と振り返る。
 
一方の藤原氏は今回はじめて映画を鑑賞したとのことで、「僕はすごく当時のことを思い出しました」という。「僕は坂本さんとは世代が離れているんですが、82年から東京にいた。坂本さんとお仕事を一緒にしたことはなかったんですが、同じ空間にいることが結構あったんです。映画には、当時の音楽の作り方が映し出されていて。特に(シンセサイザーの)フェアライトとか、そういうものが出てきて懐かしかったですね」。
 
そんな教授との接点について藤原氏は「僕は82年にはDJをしていたので。夜、DJをしているところに坂本さんがお見えになったり、というのはたまにありました」と振り返る。「ただ、音楽の話をしたことはほとんどなくて。ニューヨークでいつも行くお蕎麦屋さんにもよくいらっしゃっていたので、そこで会うと挨拶程度にお話をさせていただいていましたが、今思えばもう少し音楽の話を聞いておけばよかったと思います」。
 
本作では、教授の音楽活動を映し出しているだけでなく、80年代の東京の風景を映し出したポートレートとなる。「秋葉原や新宿アルタの前の映像も、今とは全然違う価値観のものがワーッと置いてある。竹の子族やロックンロール族みたいなのも出てくるし、賑々しくて。約40年前の映像と考えると、とても感慨深かったです」と岡村氏が語れば、藤原氏も「僕は82年に東京に出てきたので、この頃はオンタイムでしたし、とても新鮮でした。初めて見るような風景もいっぱいあって、懐かしさもあったし。映画の中で坂本さんが“政治の時代は過ぎ去って”とおっしゃっていたと思うんですが、そうした70年代を経て、坂本さんの目から見た80年代の東京の空虚さみたいなものが現れているのかなと思いました」と振り返った。


 
そんなふたりの目を引いたのは、スタジオの機材だった。世界初のサンプリング・マシンとして知られる「フェアライト(Fairlight CMI)」は、当時1200万円から1400万円もするような超高額機材だった。藤原氏も「これがちゃんと映像に残っているというのはすごいですよね。僕は当時からDJだったので、サンプリングというもの自体は知っていたんですけれど、実際に日本に入ってきた時に初めて見たのがフェアライトだったんです。そのあと85年頃、フェアライトじゃないんですけど、エミュレーターという機材を知り合いのバンドが購入して。それが720万円だったんですけど、それを貸してもらって、YMOのリミックスを作ったこともありました。当時、サンプリングというものがものすごく神々しいものだったんです」と振り返る。
 
それだけに教授が、スタジオの中で食事をしているシーンは驚きを隠せなかったという。「1400万のフェアライトの前にある卓の上で、出前でとった食事を食べていましたもんね。普通食べないですよ」と藤原氏が話すと、岡村氏は「あの卓だって何千万としますからね」と同意。「俺たちが同じことをやったら怒られますよ」と藤原氏が指摘すると、二人の応酬に会場はドッと沸いた。

当時、サンプリングの登場により、「こんな機材が出たらオーケストラがいらなくなるのではないか」「生のアーティストはいらなくなるんじゃないか」といった具合に危惧する人も多く、音楽業界で大きな論争が起こったという。「音楽業界の中でみんなが話題にしているという意味では、今のAIと近いなと思うんです」という藤原氏の考察に、「僕もそれを思った」と同調する岡村氏。「フェアライトとか、最新のテクノロジーとか。ああいうコンピューターにいつも目を光らせていた坂本さんが、今の時代に生きていたら、どういう風にAIと対決していたのか、と考えると興味深いです」と語る岡村氏。「坂本さんは、テクノロジーやコンピューターの進化は止められないけど、その途中で生まれるエラーやノイズ、綻びみたいなもの興味があると言っていて。今日、ヒロシさんと話したかったのは、まさにパンクミュージックとかヒップホップっていうのは、音楽教育を普通に受けた上で誕生したものではなくて、エラーやノイズ、綻びみたいなものだということ。理論的なものじゃなくて、ちょっと異形のものだったから面白かったし、スリリングだった」と振り返る。


 
それを受けて、「僕もそういう教育を受けてたわけでもないし、いまだに音符は読めないので。音楽の理論というのはほとんどわからない状態でパンクやヒップホップに出会って今がある」と自身のルーツを語る藤原氏。「坂本さんはそれとは真逆で、すごくアカデミックなところから来て。アカデミックな人たちというのは、パンクなりヒップホップなり、こういったサンプリングに対してアンチだった人が多かったと思うんです。でもその綻びだったり、ノイズに興味を持って、真摯に向き合ったというのは、すごく坂本さんらしい、いいところなんじゃないかなと思います」。
 
さらに教授の音楽性について、「映画音楽に限らず音楽というのはある程度予想された部分と、予想されているという前提で、それを裏切るカウンターパンチを入れる部分と。そのバランスで出来上がる、という風におっしゃっていましたが、これはよく分かります」と共感を示す岡村氏。「坂本さんの音楽はそのバランスが絶妙。ここでこう行くかみたいなメロディがたくさんあるし、前衛的な部分もある。本当に感動的な美しいメロディもあるし。物を作ってる人はみんな、そこを考えていると思います。だからその、分かりやすい部分と、ここはちょっと分かりにくくしておこうとか、そういうバランスはどのアーティストも、物を作る人なら考えてることなんじゃないのかなと思うので、いい言葉だなと思いました」。

 
本作を手掛けたのは、ニューヨーク出身のマルチメディア・アーティスト、エリザベス・レナード。外国人である彼女の目を通じて、教授の素顔や、東京の風景を映し出している。そんな映画を観て、「ドキュメンタリーだとよくコメントが入ったり、ナレーションが入ったりと、説明が入るものですが、この映画はフランス映画っぽいですよね。ロードムービーみたいな、沈黙の部分もたくさんあって。間の取り方とかも普通じゃない感じで、ゆったりとして見ることができた。まさに外国の方が撮った感じがすごくしました」と印象を語る岡村氏。藤原氏も「実際、僕らが全く気づかなかった魅力や、良さがすごく切り取られてると思うんです。当時も分からなかったし、今でも本当の意味でこの良さを理解しているのか、自分でも分からないですが、今でも海外のアーティストが日本に来て、PVを撮ったりしていて。なおかつこういう80年代の味付けにわざと加工したりもしているじゃないですか。そういう意味では彼らにとってすごく魅力的なステージなんだろうなと思います」と分析した。
 


そんな教授の魅力についてあらためて「僕は一貫して坂本さんに関して思うのは“ルックスがいい”ということ」と評した岡村氏。「カッコいいというのは大きかったと思います。化粧をしたり耽美的なことをしても似合う人だったから、本当に華があった。だからよく雑誌の表紙にもなっていましたし、特に80年代なんていろんなコマーシャルに出ていたじゃないですか。笑いもできたし、カッコいいこともできたし、実験的なこともできた。まさにトリックスター的な部分もあったと思います」。

何度観ても新たな発見が見つけられる本作ということで、あらためて注目のポイントについて質問された岡村氏は「映画では大事な言葉をいろいろと言っているんですが、1回目は見逃してしまうこともあります。でも何回か見ていくうちに、こんなこと言っていたんだと。そうした言葉を聞きながら映画を見ると、84年っていう時代も炙り出されるし。坂本龍一さんが、YMOが終わった時にどういう心境だったかっていうのも炙り出されている。その前は学生運動の時代で、政治の季節は終わったということも言っていましたし。そういう言葉をちゃんと聞きながら、追いかけるのも面白いと思います」。
 
一方の藤原氏も「やはり僕はこの映画と同世代なので、懐かしい、という見方をしてしまっているんですよ。1回目に見たときは懐かしいという気持ちだったんですけど、実際はそうじゃなくて。違う視点で見て、新しいものが発見できるんじゃないかなと思います。それと坂本さんの発言ですよね。坂本さんの言葉の中に、新しい発見や、今につながる何かが隠されているんじゃないかなと思います」と会場に呼びかけた。

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